中1生の英語学習に関する調査「小学校英語は中学校で役立つ」小6→中1で3割減 解決のカギは中学校での「話す」活動の充実にあり

株式会社ベネッセホールディングス(本社:岡山市、 以下ベネッセ)の社内シンクタンク「ベネッセ教育総合研究所」は、 2016年3~4月に、 全国の中学1年生1,170名を対象に「中1生の英語学習に関する調査」を実施しました。 今回の調査の目的は、 中1生の英語学習や小中接続の実態・課題を把握することです。 本調査の一部回答者(583名)は、 小学6年生の時に「小学生の英語学習に関する調査」(2015年3月実施)にも回答しています。 本調査と前調査の結果を比較することで、 小学6年生から中学1年生への英語学習に対する意識の変化についてとらえることができます。
次期学習指導要領での小学校英語の「教科化」「早期化」を前に、 本調査の結果が今後の英語教育の在り方を検討するための一助となれば幸いです。

主な調査結果は以下の通りです。

1.「小学校英語は中学校で役立つ」という小6生の時の期待に対し、 中1生では半数が「役に立たない」。
・小学校英語に対する子どもの評価について、 同一の子どもの小6生から中1生への意識の変化を見た。 小6生の時には、 82.6%が「小学校の英語の勉強は中学校で役に立つと思う」と肯定していた(「とても+まああてはまる」の%)が、 中1生の終わりの時点で、 実際に「小学校での英語の勉強は中学校で役に立っている」と肯定している比率は53.9%と、 小6生の時よりも大きく減少している(図1)。

2.「英語を勉強する上で大切だと思うこと」のうち、 「発音」「たくさん会話すること」が小6から中1で減少。
・英語を勉強する上で大切だと思うことについて、 小6生から中1生への意識の変化を見た。 「発音をきれいにする」「英語でたくさん会話をする」といった「話す」ことに関連する項目が減少している。 一方で、 「問題をたくさん解く」「英語をたくさん聞く」「英語をたくさん読む」が増加している(図2)。

3.小学校英語に役立ちを感じている中1生は、 中学校の授業で「話す」活動を多くしている。
・小学校英語に役立ちを感じている中1生は、 役立ちを感じていない中1生よりも、 学校の授業で英語を使った活動を多く行っている。 特に、 「自分の気持ちや考えをその場で考えて英語で話す」(役立ちを感じている中1生52.4%>役立ちを感じていない中1生35.8%、 「よく+ときどきする」の%、 以下同)、 「自分や家族や身近な人について英語で紹介する」(59.8%>46.0%)といった「話す」活動で差が大きい(図3)。

4.小学校英語に役立ちを感じている中1生は、 「わかろうとする」「伝え合おうとする」意欲が高い。
・小学校英語の役立ち感の有無で、 コミュニケーションに対する意欲に違いが見られた「英語で話している人の気持ちや考えを理解しようとする」「聞いた内容がわからないときは、 聞き返したり質問したりする」「お互いの気持ちや考えを伝え合おうとする」といったコミュニケーションに対する意欲は、 小学校英語に役立ちを感じている中1生の方が、 役立ちを感じていない中1生よりも高い(図4)。

【結果からの考察】
本調査で、 小6生の時に多くの子どもが感じていた「小学校英語は中学校で役立つ」という意識が、 中1生で大きく減少していることがわかりました。 文部科学省が、 「小中高が連携し、 一貫した英語教育の充実・強化」を目指している中で、 中1生の約半分が小中学校の学びのつながりを感じていないことは課題といえるでしょう。
また、 「英語を勉強する上で大切だと思うこと」について、 「発音」「たくさん会話をする」といった「話すこと」に関連するものが減少し、 「問題をたくさん解く」といった知識の習得を目的とするようなものが増加したことも注目すべきところでしょう。

今回、 役立ちを感じている中1生ほど、 授業では英語で「聞く」「話す」活動を多く行っていました。 これは、 「聞く」「話す」活動が中心の小学校英語と同様に、 中学校でも「聞く」「話す」活動が多く行われることによって、 小中学校の学びのつながりを感じやすいことを表していると考えられます。
また、 役立ちを感じている中1生は、 英語によるコミュニケーションに対する意欲が高いことがわかりました。 「わかろうとする」「伝え合おうとする」といった意識を持ちながら、 さらに「聞く」「話す」活動をたくさん行うことにより、 「わかったり通じたりするとうれしい」という経験を重ねていると考えられます。 そのことが、 コミュニケーションに対する意欲を高めることにもつながるでしょう。 小学校英語に役立ちを感じている中1生は、 「他の教科と比べて英語はおもしろい」「教室の外で英語を使ってみたい」「英語の授業をもっと増やしてほしい」という意識も高く、 充実した「聞く」「話す」活動が、 英語の学習意欲の向上にもつながり、 好循環を導いているのではないかと考えられます。 (図5)

これまでの調査から、 中高の英語教育では音声練習・文法指導が中心で、 「話す」活動が少ない傾向が見られます。 しかし、 今回の調査で、 「わかろうとする」「伝え合おうとする」活動としての「聞く」「話す」活動が、 コミュニケーションや学習に対する意欲を高める上でも重要な役割を担っていることがわかりました。 音声や文法などの知識・技能面の指導ももちろん大切ですが、 「聞く」「話す」活動をより充実させることも必要でしょう。 このことは、 今後、 5・6年生で行われる教科としての「英語」でも、 3・4年生の「外国語活動」でも、 「聞く」「話す」活動を充実させる必要があることを改めて示唆していると考えられます。
本調査では、 この他にも英語学習の楽しさや、 先生や保護者の関わりなど、 これからの英語教育の在り方を考える重要な材料が多くあります。 ベネッセ教育総合研究所では、 今後も、 これまでの調査研究とも合わせて結果の発信をしていきながら、 よりよい英語教育の在り方を引き続き考えていきたいと思います。

●調査概要

名称 中1生の英語学習に関する調査
調査テーマ 中1生の英語学習に関する意識と実態
調査時期 2016年3月~4月上旬
調査方法 郵送法による質問紙調査
調査対象 全国の中学1年生 1,170名
*東京大学社会科学研究所とベネッセ教育総合研究所共同研究
「子どもの生活と学び研究PJの調査モニター。
*このうち583名は、 継続分析対象者
(2015年3月実施「小学生の英語学習に関する調査」)
調査企画・ 分析メンバー 吉田 研作 (上智大学教授)
根岸 雅史 (東京外国語大学大学院教授)
酒井 英樹 (信州大学教授) 長沼 君主(東海大学教授)
金子 真理子(東京学芸大学教授) 工藤 洋路 (玉川大学准教授)
高木 亜希子 (青山学院大学准教授)
重松 靖 (国分寺市立第二中学校校長)
津久井 貴之(お茶の水女子大学附属高等学校)
木村治生(ベネッセ教育総合研究所副所長)
小泉和義(ベネッセ教育総合研究所副所長)
加藤 由美子(ベネッセ教育総合研究所グローバル教育研究室室長)
福本 優美子(ベネッセ教育総合研究所研究員)
調査項目 小学校での英語学習について、 英語や外国に対する意識や興味・
関心、 コミュニケーションに対する意識、
英語の必要性と使うイメージ、 学校外での英語学習、
英語学習観、 英語の先生の様子、 保護者の様子など

◆ベネッセ教育総合研究所のホームページ (本リリース資料など掲載) http://berd.benesse.jp/

■主な調査結果

 

 

 

 

 

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